瀧下嘉弘    建築家

 

1945年岐阜県生まれ。1967年早稲田大学法学部卒業。在学中、故郷の古民家がダム建設で湖底に沈むことを知り、それを譲り受けて鎌倉へ移築、住み始める。その後、世界36カ国を巡る。帰国後、古美術商を始める一方、建築家として古民家の移築保存に情熱を注ぎ、これまで35軒(4件は海外)を設計施工。一級建築士。仕口堂主人。

 

1971年

ザ・カマクラ設立、経営

1976年

ハウス オブ アンテイックス(有)設立、代表取締役社長

2006年

NPO法人日本古民家保存協会 理事長

2008年

NPO法人友情の架け橋音楽国際親善協会 理事

2010年

仕口堂設立

2013年

ジャパン・ソサエティー ボストン Cultural Distinction Award 受賞

2014年

鎌倉・文化の森、設立。代表

2017年

コルビー大学芸術学部 名誉博士号授受

著 書

『民家移築』 2002年 講談社インターナショナル
『仕口―白山の木霊 THE ART OF SHIGUCHI JAPANESE JOINERY ON DISPLAY: Tree Spirits of Mt. Hakusan』 2017年 仕口堂

取材記事

“Architectural Digest”、“House Beautiful”、『日経新聞』、『毎日新聞』、『岐阜新聞』、『ウォール・ストリート・ジャーナル』、『ニューヨーク・タイムズ』、
“The Journal”(アメリカ商工会議所機関誌)、『ウインズ』(日本航空グループ機内誌)、『翼の王国』(ANAグループ機内誌)、『家庭画報』、『婦人画報』他

出 演

[テレビ]NHK:2004年7月1日「生活ほっとモーニング」“魅力再発見!古民家”、NHKBS-1:2003年6月20日「ウィークエンドジャパノロジー」
[ラジオ]NHK:「こころの時代」「ラジオ深夜便」、NHK FM:「日曜喫茶室」他

講 演

ハーバード大学、コルビー大学、カンザス大学、大妻女子大学、慶応大学、日本外国特派員協会、CWAJ、東京アメリカンクラブ、ジャパン・ソサエティー ニューヨーク、ジャパン・ソサエティー ボストン、ウォルポール ソサエティー、朝日カルチャーセンター、静岡民家の会 他

 


 

古民家移築再生の仕事

 

 私がまだ学生であった1965年、九頭竜ダムの底に沈む運命にあった古民家を5千円で譲ってもらい家族総出でこの鎌倉の地に移築再生しました。以来50年その家に住み続けています。
 この体験が切っ掛けとなり古民家移築再生を終生の仕事としています。再生した古民家に自分自身が住んでみてその住み心地の良さから、施主には純粋に自信をもって古民家の移築を薦めることが出来ました。
 かやぶき屋根の古民家は、「暗い、寒い、貧しい」の象徴として見捨てられてきました。白山麓の古民家は豪雪に耐える様に太く頑丈な柱と梁が使用されています。まだ何百年も十分に使える家を何故捨てるのか? 私の人生は、もったいないという思いで日本人が「捨てるもの」を拾って歩いた人生といってもよいかもしれません。
 無数の素晴らしい古民家が日本から消えていった歴史を顧みるとき、先人が長い間、日々の生活の中でコツコツと守ってきた日本固有の文化のあまりにもあっけない終息に驚きと悲しみ、無力感と無念さで胸が詰まります。
 私が古民家移築の生業を続けられたのは99%大工さんをはじめとする無名の日本の伝統職人さんのお陰です。私の役割は1%ぐらいのものです。何千年もの伝統を伝承してきた彼らの人間としての魅力と匠としての仕事の価値は普遍です。そこに私は尊敬の念を持つとともに、計り知れない「美」を感じます。
 前近代の循環維持可能社会の頂点を代表する古民家とその再生時の遺物との対話は私にとって永遠に尽きない仕事であり楽しみでもあります。

2017年11月30日
鎌倉にて

瀧下嘉弘


ローデリック邸、1967年


ローデリック邸、1967年


サロモン邸、軽井沢、1975年


ウェーバー邸、葉山、1980年


ハウスオブアンティックス、鎌倉、1988年


ユニオン・スイス銀行ゲストハウス、
山中湖、1989年


大船の家、2001年


日本民藝館、東京、2006年


T.マーフィー邸、東京、2008年


B. ヤング邸、2011年